【インタビュー】餅は餅屋?!プロが作った国産3Dプリンター「3D MagiX」
メイカーズラブの記事でも何度かご紹介していますが、国産3Dプリンターが最近増えてきましたよね。そんな注目している一台がムトーエンジニアリングの「Value 3D MagiX」です。
そこで、昨年末にムトーエンジニアリングさんにお邪魔して、実際に「3D MagiX」を見ながらのインタビューをしてきました。
インタビューアーはメイカーズラブ佐々木、お答えいただいたのは株式会社ムトーエンジニアリング代表取締役の阿部要一さんです。
ーーーメイカーズラブ
ムトーさんと言えば、3Dシステムズの代理店という印象が強いですが自社のプリンターを出されたのはどうしてなんですか?
ムトー 阿部さん
はい、弊社は3Dシステムズ様の代理店をやっていますが、実は製造業のメーカーとしての歴史が長いんですよ。
ドラフターなどの設計機器や、看板をプリントするような巨大インクジェットプリンターなどを自社で製造しています。
3Dプリンターも技術的にはもっと前から作れたのですが、3Dシステムズ様との代理店契約で自社では作れないという制約がありまして。。。
しかし、2013年の8月に契約を改訂したので、そこでようやく自社開発できることになったんです。
ーーーメイカーズラブ
あー、なるほど、そうすると「3D MagiX」は4ヶ月で作ったプリンターなんですね。
なんか、ベンチャー並のスピードですね。。。
しかし、実際に動いてるプリンターを見るとかなり驚く部分が多いですね〜
例えば、プリントがかなり早いですよね。こういう大きめのもの(写真)はプリントに1時間以上かかりますが、30分ぐらいで出力されたので普通のプリンターの倍ぐらいという印象です。
あとは、精度の高さです。自分で3Dプリンターを使っていて思うのがスペック上の積層ピッチがかなりくせ者とうことです。
積層ピッチが0.1mmと書いてあってもプリンターの剛性がブレブレで、プリントがガタガタになるものが結構あるんですよね。。。
「3D MagiX」は、こういう棒みたいな出力(下の写真)が出来るのはボディーの剛性がかなり高いってことですよね?
ムトー 阿部さん
はい、先ほどお話ししたように、当社は2Dの大型プリンターを作っている関係でXYの剛性を高める技術を元々持っています。
プリンターの構造(写真)見ていただくと分かりやすいと思いますが、X軸やY軸は2本のかなり太いフレームで支えて、各部を金属で接合しています。
プラスティク部品が多い他社のRepRapのプリンターとは構造的にかなり違うモノです。
長い棒のような出力が可能なのは、このボディの剛性でブレが少ないからなんですよ。
あと、プリントスピードが速いのはプリントヘッドに2つのファンを付けているためです。
冷却力を高めることで素材の乾きが早く、素早く積層することが出来ます。
さらに、サポート材もかなり減らすことが出来ます。通常プラスティックを積層型のプリンターは液ダレを防ぐためにサポート材がかなり必要です。フィギュアなんかをプリントすると剥がすのって大変ですよね。
でも、「3D MagiX」は冷却力を高めることで、こういう(写真)中空構造のモデルをサポート材無しで出力することが出来るんですよ。これは、他社さんでは難しいと思います。
ーーーメイカーズラブ
なるほど、確かにサポート材を剥がすのは大変なんですよね。。。
複雑なモデルはサポート材が多くなりすぎて、最近はCADデータであらかじめサポート材を作っておく人もいます(笑)
あと、プリント面積が200×200×170mmとかなり大きいですよね。でも、低価格の3Dプリンターって大きなものをプリントすると歪んで使えないという経験があるですが、その点は大丈夫ですか??
ムトー 阿部さん
そうですね。そういう部分がプロの力の見せ所だと思ってプリンターの開発にあたっています。プリントが歪むのは、プリンターの剛性が弱いのと、温度管理が難しいことです。
プリンターの剛性は先ほどお話ししましたが、「3D MagiX」は温度管理も安定しています。プリント中の温度変化が少ないので、積層が歪むことも少ない設計なんです。
ーーーメイカーズラブ
それはプリンターに付いている扉のことですよね?これ気になっていたんですが、特許って大丈夫なんですか?
低価格の3Dプリンターってむき出しのものが多いのは、Stratasys社の特許を侵害しないためだと聞いてたことがありますが。。。
ムトー 阿部さん
はい、確かに3Dプリンターを完全に囲うことはStratasysさんの特許に抵触してしまします。
しかし、我々も製造業のメーカーとして長年やってますので、特許調査をしっかりやって今の観音開きの扉にしたんですよ。
ーーーメイカーズラブ
あと気にある点としてはサポートですね。3Dプリンターを使っていると多いのがトラブルです。
2Dのプリンターと違って素材が詰まったり、部品が取れたりイロイロ問題が起こるんですが、国産メーカーはベンチャーが多いせいかサポートが薄いんですよね。。。
ムトー 阿部さん
そうなんです!3Dプリンターはまだまだどの機種を買ってもトラブルは必ずあります。しかし、弊社は製造業のメーカーですからサポートも普段からやっていることです。
「3D MagiX」についても専用のコールセンターを作りました。そして、担当しているのは実際にプリンターの開発にあたったエンジニアなんです。なので、お客様からの質問にも十分お答えできると思います。
ーーーメイカーズラブ
最後に、価格と狙っているターゲットについて教えてください。
販売価格の21万円って、性能を考えるとかなり安いように感じますが。。
ムトー 阿部さん
値段については実は原価がけっこう高いので、かなりチャレンジングな価格を設定しました(笑)
しかし、他社さんの低価格のプリンターを考えるとこのぐらいじゃないと売れないだろうなという戦略的な価格なんです。
そして、性能面を考えると業務用に近いプリンターだとも思っています。なので、中小企業などにビジネスユースで活用してもらえるといいですね。
実際販売を開始して間もないのですが、予約注文が沢山入ってまして
国内の工場では年末年始返上で製造中です!(訪問したのは昨年末)
<インタビュー後の感想>
自分の印象としては、国産3Dプリンターもプロが出て来たなという感じですね。
各社特徴があるプリンターが出てきている中でも、「3D MagiX」性能面ではリードしているなという印象。一台欲しいですね。。。
ディアルヘッドのプリンターも視野に入ってるということだったので、今後の展開も楽しみなプリンターです!