【基礎知識】低価格3Dプリンターの出来ない事
世間ではいまちょっとした3Dプリンターブームですよね。
しかし、ちょっと誤解を生んでいるような気がするのが、マスコミでの紹介のされかたです。
実は、テレビなどの報道で出てくる3Dプリンターで作ったというサンプルはほとんどが数千万円以上と高額な光学造形方式や石膏方式のものだったりします。
でも、実際に、いまブームになっている40万円以下の低価格3Dプリンターは全て「熱溶解積層法」という方式のものです。
そして、低価格の3Dプリンターで出来る事が何なのかは実はあまり知られていません。
結論から書くと、構造上出来ない事が大きく4つあります。
1.構造上、強度や気密性が必要なものは作れない。
低価格の3Dプリンターで素材を積層するときには、材料のプラスチック同士がちゃんとくっつかないという問題があります。
少し前に話題になった3Dペンをおぼえていますか。この画像のようにノズルからでたプラスチックはすぐに固まってしまいます。
熱溶解積層法の3Dプリンターも基本的には同じ仕組みです。
すぐ固まるプラスチックを積層するということは、各層はあまりくっついていないということです。素材はABSが使われていますが、一体型ABSとは違い気密性や耐久性には限界がありそうです。
▼実際に、作ったコーヒーカップの動画(コーヒーが漏れる)
2.カラー出力は出来ない。
表参道で行われていた「自分のフィギュアを生成してくれるサービス」などをみると、フルカラーのプリントが出来るように思えてしまいます。
しかし、今の所フルカラーの3Dプリントができるのは1000万円近くする石膏式のZ-printerだけです。(Z-printerの詳細はこちらへ)
カラーのフィギュアを作ろうとすると、以下の画像のようにプリントしたあとに着色する必要があります。
石膏式は値段が高いこともさることながら、石膏を材料に使うため大量の粉が出てきます。専用ルームを作る必要があるなど、管理には相応のコストが必要になりそうです。
↓石膏の中から プリントした物を掘り出す様子
3.精度の問題で複雑なパーツを組み合わせるものに不向き。
熱溶解積層法3Dプリンターの原理は単純で、0.4~0.5mmの径の糸状のプラスチックをノズルから押し出していきます。そのとき、ノズルを熱くして、糸状のプラスチックを溶かしながら出していきます。
まず、0.5mmの線を一本引きます。次に引き返すと、2本目の線になります。2本の線になると、幅は1mmになります。
つまり0.4mmや、0.9mmや1.2mmとかはできないのです。この特徴からでも、精度に制限が出てきます。
今の所使っている人たちの報告を読むと、iPhoneケースを出力してiPhoneにはめることは出来るようです。
しかし、複雑な部品を複数組み合わせるようなものは難しいことが考えられます。
3Dプリンターの医療利用として話題になった「先天性多発性関節拘縮症の少女のための補助器具」は複雑なパーツの組み合わせですが、かなり高額な3Dプリンターで作られた物です。
4.いろんな素材は組み合わせられない。
この写真をみると、完成品が3Dプリンターで出力出来ているように錯覚しますよね。でも、これはすべてABSで作られたもので、タイヤの部分はゴムではありません。
身の回りの製品を見てみると、だいたいは金属とプラスティック、などの組み合わせで作られています。
プラスティックと金属は沸点もまったく違うため、3Dプリンターの構造上、組み合わせて成形する事はできません。
つまり、3Dプリンターで作れる物は単一種類の素材に限られるので、作れる物には限界があるわけです。
3Dプリンターを勉強する オススメ書籍3册!
意外にちゃんと読んでる人が少ない、クリス・アンダーソンの「MAKERS」。よく読むと、なぜこの本や3Dプリンターが注目されたかが分かります。
あとは、水野操さんの3Dプリンターや自宅でのファブリケーションについて書いた本もオススメ。
上の記事で触れた3Dプリンターの仕組みや評価ポイントがよく分かりますよ。