徹底比較!国産の家庭用3Dプリンターの価格・性能
家庭用の3Dプリンターは何を基準に選べばいいのか?
国産の家庭用・低価格3Dプリンターも色々なメーカーが出てきていますよね。
自分でいろいろ使ってみて思うのは、3Dプリンター自体がまだまだ使うのが難しい機械だというコトです。なので、使い方や整備サポートなどが手厚いメーカーがおすすめです。
それと、基本的には同じRepRapプラットフォームで作られていますが、構造やタイプ別で性能の違いが出てきます。
そこで、低価格3Dプリンターを選ぶときのポイントと、現在発売されている国産の主要3Dプリンターをご紹介します。
1.値段以外にも、3Dプリンターの構造から安定性をみる
熱溶解積層型のプリンターは、簡単にいうとソフトクリーム作る過程と同じようなものです。
ホットエンドで溶かしたプラスティックを、ノズルから重ねるように積層していくので、その間の振動や平行性などがプリント品質を左右します。
例えば、家電量販でも見かけるようになった、3Dシステムズの「cube」は3Dプリンター関係者の間では、剛性が弱くプリント中の振動が大きいと言われています。
台座も平行が取りづらい構造のため、プリントされたモノはスペック上の積層ピッチである0.1mmよりもだいぶ荒いものに成りやすいという問題があります。
各メーカーの構造上の工夫の一例をご紹介します。
例えば、RepRapプラットフォームの原型に近い「REPRAP MENDEL Evolution」は、値段が格安なせいかスポークで繋がる構造のためかなり振動が置きやすい構造です。
対して同じタイプでも、「atom」は厚いフーレムを基盤にした構造で、全体の剛性を強化しています。台座も構造的に平行が取りやすくなっています。
という分けで、3Dプリンターを選ぶ際は、値段だけでなく構造から剛性を判断することがポイントだと思います。
2.低価格3Dプリンターのタイプ別特徴から考える
低価格のプリンターを選ぶポイントとして、タイプごとの特徴が参考になると思います。
低価格の3Dプリンターは現在、ボックス型、メンデル型、フレーム型の3タイプに分類されます。
メディアでよく見るのはMakerBotのReplicatorのようなボックス型ですよね。
全てボックス型にすれば良さそうな気もしますが、それぞれの形ごとにメリットとデメリットがあるのです。
Maker BotのReplicatorに代表されるボックス型のメリットは、内部の温度を熱する時間が早くなり、温度が安定するためプリント品質のぶれが少なくなります。
しかし、完全に閉じたボックス型はStratasysの特許を侵害してしまします。それが分かっているため、現在国内でみられるボックス型は一部を囲っているだけです。なので、ボックス型になっている意味があまりありません。
それからボックス型のプリンターはかなりの重量になるという問題もあります。
木製にすれば軽くなりますが、 木製のBox型はプリント時にすごくウルサイという欠点もあったりします。
■メンデル型:低価格で自己拡張できるけど、調整がやや手間
メンデル型はフレームをプラスティック部品で繋いでいます。なので低価格で製造できるというのが最大のメリットです。
そして、プラスティックの部品はプリントできるため、機能を付け足す自己拡張で長く使うこともできます。
しかし、構造上各部をつなぐネジがだんだん緩んでくるので、ある程度の調整が必要となります。調整してないと、けっこうプリントがずれたりしますね。
そんなメンデル型を取り扱うには、3Dプリンターの仕組みに関する正しい知識が必要です。
実際の所どのタイプの3Dプリンターもトラブルがかなり起きるので、atomを作っているGenkeiさんがやっているような組み立てセミナーなどは勉強になりますよ。
▼以前組み立てセミナーにスタッフが参加したときの紹介記事
3Dプリンター「atom」を組み立てるセミナーに行ってきた
■フレーム型:静かで高い精度だけど、ちょっと高くなる
メンデル型と見た目は似ていますが、剛性の高いフレームでプリント結果のぶれが少なくなります。プリント中の音も静かです。
メンデル型の拡張性の高さを保ちつつ、使い勝手を増しているという点で、注目の方式だと思います。
ただし、本体価格は高くなりがちです。(写真はBlade-1の構造図より)
3.すぐ買える!国産3Dプリンターの特徴とスペックをご紹介。
atom:かなり奇麗な積層が出来て、組み立てセミナーがついてる
RepRap Japan代表の加藤大直氏が開発した国産の3Dプリンターです。メンデル型の欠点を補う剛性の高いボディで、設定次第で最大0.025mmと光学造形方式並みの奇麗な積層が可能です。
さらに、「atom 3Dプリンターは」完成品ではなく、組み立てワークショップ付きのキットとして提供されることに特徴があります。
3Dプリンターはまだまだトラブルの多いデバイスです。なので、構造をある程度把握するためにもワークショップがある「atom 3Dプリンター」はいいと思います。
名称 | atom |
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タイプ | メンデル型 |
価格 | 12万9800円 組立ワークショップは別途2万円 |
積層ピッチ | 最大 0.025mm |
プリント面積 | 135×140×140mm(高さ×幅×奥行き) |
マテリアル | PLA ※オプションでABSも対応可能 |
重量 | 5kg程度 |
本体サイズ | 268×325×275mm(高さ×幅×奥行き) |
対応OS | Windows Vista / Windows 7 / Windows8 /MacOSX |
SCOOVO:国産の本格的なボックス型3Dプリンター
MakerbotのReplicatorと同じボックス型の国産3Dプリンターです。3Dプリンターとしては標準的な性能ですが、国産メーカーのモノとしては良いレベルですね。
公式サイトには動画マニュアルなども用意されており、電話やEmailでのサポート体制などもしっかりしている印象です。
しかし、オプションのアクリル版を使えば完全に囲えるタイプということで、特許的な問題が懸念されます。
名称 | SCOOVO C170 |
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タイプ | Box型 |
価格 | 18万9000円 |
積層ピッチ | 0.1mm |
プリント面積 | 175×150×150㎜ (高さ×幅×奥行き) |
マテリアル | PLA |
重量 | 約 15 kg |
本体サイズ | 404×376×333mm (高さ×幅×奥行き) |
対応OS | Windows XP / Windows Vista / Windows 7 / Windows 8 |
Blade-1:福岡県の国産メーカー、フレーム型で高い精度。
わりと早くから国産3Dプリンターを作ってるホットプロシードのプリンター。プリント面積がやや小さいが、PLAに加えてABSに標準対応している。
さらに、フレーム型で剛性が高く静寂性とプリント結果のぶれが少ない。
名称 | Blade-1 |
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タイプ | フレーム型 |
価格 | 13万円 |
積層ピッチ | 0.1mm |
プリント面積 | 100×100×100mm |
マテリアル | ABS・PLA |
重量 | 不明 |
本体サイズ | 360×300×310mm |
対応OS | Windows/ MacOSX/linux |
DS1000:コンパクトで早い3Dプリンター、ナイロンもプリントできる。
特徴としては、積層ピッチが最大0.05mmと細かく、素材にPLAやABSに加えて高温じゃないと融けないナイロンが使えることですね。さらに、1軸に対して2つのモータを使用することで、軸転換の回数を減らしてバックラッシュを減らし高速化を図っています。しかし、プリント面積が10.5×10.5×10.5cmと小さく、小さなものを作るのに向いてそうです。
名称 | DS.1000 |
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タイプ | Box型 |
価格 | 18万3750円 |
積層ピッチ | 0.05mm~0.35mm |
プリント面積 | 105×105×105mm(幅×奥行×高さ) |
マテリアル | PLA、ABS、ナイロン |
重量 | 約5kg |
本体サイズ | 270×280×255mm(幅×奥行×高さ) |
対応OS | Windows 7/ Windows 8 |
BS01 BONSAI Mini:超小型だけど、プリント面積は大きめの木製ボックス型プリンタ
国産としては珍しく10万円を切る価格帯の3Dプリンター。大きさは非常に小さくわずか25cm四方です。
超小型の割にプリント面積は小さくなく、iPhoneケースなども楽にプリントできます。
その他の性能はそこそこですが、この価格なら気軽に買えそうですね。2014年はディアルヘッドにも対応するそうです。
名称 | BS01 通称BONSAI Mini |
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タイプ | 木製Box型 |
価格 | PLA モデル 組み立てキット : 89,800円(税込) PLA モデル 完成版 : 99,800円(税込) ABS/PLAモデル 組み立てキット : 99,800円(税込) ABS/PLA モデル 完成版 : 109,800円(税込) |
積層ピッチ | 0.1mm |
プリント面積 | 150×130×100mm(幅×奥行×高さ) |
マテリアル | PLAモデル、ABS / PLA(ヒートベッド付き)モデルの2種類 |
重量 | 約5kg |
本体サイズ | 250×250×270mm(幅×奥行×高さ) |
対応OS | Windows 7以上/Mac OS X |
Value 3D MagiX;フレーム型とボックス型の長所を兼ね備えた3Dプリンター
フレーム式の精度とボックス型の安定度を兼ね備えた国産プリンター。
以前から3Dプリンターを扱うムトウエンジニアリングが開発し、業務用に迫る品質とのことです。
これは実物を見た事がまだ無いのですが、開閉式のボックス型なので特許問題も回避できているのかもしれません。
名称 | Value 3D MagiX |
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タイプ | フレーム型 |
価格 | 21万円 |
積層ピッチ | 0.1mm |
プリント面積 | 200×200×170mm |
マテリアル | ABS、PLA(直径3.00mmが標準) |
重量 | 17Kg |
本体サイズ | 500(D)×(W)550×(H)530mm |
対応OS | Windows7/Windows8 |
REPRAP MENDEL Evolution:メンデル型の激安プリンター
おそらく、国産としては最安69,800円という価格帯で話題になった3Dプリンター。秋葉原で発売されたときは30台が即売したそうです。
しかし、メンデル型の原型ほぼそのままなので、扱いは難しそうですね。。。
機械系の技術に自信のある人が購入するには悪くないと思います。
名称 | REPRAP MENDEL Evolution |
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タイプ | メンデル型 |
価格 | 6万9800円 |
積層ピッチ | 0.1mm |
プリント面積 | 200(W) x 200(D) x 180mm(H) |
マテリアル | ABS、PLA |
重量 | 400(W) x 400(D) x 400mm(H) |
本体サイズ | 8Kg |
対応OS | Windows Vista / Windows 7 / Windows /MacOSX |
4.国産の家庭用・低価格3Dプリンターの性能比較表
最後に各メーカーの3Dプリンターの比較表を作りました。積層ピッチやプリント面積など、押させて置くべきポイントや、マテリアル、重量なども載せてみました 。
名称 | タイプ | 価格 | 積層ピッチ | プリント面積 | 重量 | マテリアル |
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atom | メンデル型 | 12万9800円 | 0.025mm | 135×140×140mm | 5kg | PLA ABS可 |
SCOOVO | ボックス型 | 18万9000円 | 0.1mm | 175×150×150mm | 15kg | PLA |
DS.1000 | ボックス型 | 18万3750円 | 0.05mm | 105×105×105mm | 5kg | PLA、ABS、ナイロン |
BS01 | 木製ボックス型 | 79,800円~ | 0.1mm | 150×130×100mm | 5kg | PLA、ABS |
Value 3D MagiX | ボックス型 | 21万円 | 0.1mm | 200×200×170mm | 17kg | PLA、ABS |
Blade-1 | フレーム型 | 13万円 | 0.1mm | 100×100×100mm | 5kg | PLA、ABS |
MENDEL Evolution | メンデル型 | 6万9800円 | 0.2mm | 200×200×180mm | 8kg | PLA、ABS |